ロービジョンフットサルとは
お互いを補い合ってプレーするサッカー
弱視者(ロービジョン)一人ひとりの異なる視力・視野を生かし、お互いを補い合いながらプレーするサッカーです。フットサルをもとにしたスポーツである点はブラサカと同様ですが、アイマスクは装着せず、音の出ないボールを用いて、弱視の選手たちが見えにくい状態のままプレーすることが特徴です。視覚障がい者スポーツのクラス分けの用語ではB2/B3クラスと呼ばれることもあります。
視力の3カテゴリー
B1 | 全盲から光覚(光を感じられる)まで |
---|---|
B2 | 矯正後の診断で、視力0.03まで、ないし、視野5度まで |
B3 | 矯正後の診断で、視力0.1まで、ないし、視野20度まで |
一般的に「目が悪い」というと視力が弱い状態を想像するかもしれませんが、弱視者の「見えにくさ」はその限りではありません。下図のように、ぼやけ、欠け、にごりなど様々な症状があり、さらに、それらの症状が掛け合わされて、様々な見えにくさが存在します。
対象・資格
フィールドプレーヤー | 弱視者(国内の大会によっては晴眼者も出場可能) |
---|---|
ゴールキーパー | 晴眼者または弱視者 |
主な規定
人数 | 選手5人 |
---|---|
試合時間 | 前・後半とも20分プレイングタイム(国内大会では各大会要項に準拠) |
ピッチサイズ | 40m×20m |
ゴールエリア | なし |
ゴールの大きさ | 縦2m×横3m |
ロービジョンフットサルならではのルール
ボールの色
ピッチやラインとはっきり区別がつく色のボールを選んで使用します。ブラサカのように音の鳴るボールではありません。
FP2名以上はB2クラス
フィールドプレーヤー4人のうち、最低2名は、B2クラスの選手の出場が義務付けられています。そのほかはB3クラスの選手が出場します。(国内大会では各大会要項に準拠。)
赤い腕章
B3クラスの選手は赤い腕章を装着して出場します。
ロービジョンフットサルの魅力と可能性
意外と身近な「見えにくさ」
なにも知らずに初めてロービジョンフットサルを見た人からは、「なんだか下手なフットサルみたいだね……」といった声が聞かれることがあります。それもそのはず、弱視の選手が目の見えにくい状態のままプレーしているため、キックが空振りしたり、的外れなパスが飛び交ったりするからです。それでも諦めることなくチームで声を掛け合い、選手同士が互いの「見えにくさ」をカバーしあいながらシュートを決めた時は、この上ない歓喜に包まれます。
「ロービジョン」という呼称はあまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。しかし、視覚障がい者の中で全盲の人は1〜2割に過ぎず、ほとんどがロービジョン、弱視者であるという調査結果があります。また、「見えにくい」という状態は、晴眼者にとって身近な存在と言えます。疾病やケガなどにより、それまで見えていた人が見えにくい状態になる可能性は少なくありません。近年は、高齢化やスマートフォンの普及などにより、視力や視野に支障をきたす人が増加傾向にあります。
持てる視野・視力を生かし、補い合う
こうした中、ロービジョンフットサルは大きな魅力を持っていると言えます。パラリンピックの競技種目でもあるブラインドサッカー(5人制サッカー)のような派手さはありませんが、弱視でも、持てる視力・視野を最大限生かして自分らしくスポーツを楽しめる。同じ境遇の仲間がいる。そんな希望こそ、人生を豊かにする一助になるはずです。そして、弱視者と晴眼者が一緒になって「見えにくさ」を乗り越えていく様子は、「○○しにくい」という生きづらさを抱える人たちはもとより、全ての人に、支え合って共に生きることの素晴らしさを発信していけるはずです。