ニュース #007 【JBFA新職員】世界を旅したブラサカ選手・内田 佳

#007 【JBFA新職員】世界を旅したブラサカ選手・内田 佳

ブラインドサッカーを通じて“本当に伝えたいこと”を追い求めて

 

4月になり、日本ブラインドサッカー協会(以下、JBFA)に新たな職員が入職しました! 内田 佳(うちだ けい)さんです。実は、かつて1年半ほどJBFAに勤務していた内田さん。退職後は一般企業で働いたり、世界中を一人旅したりと、さまざまな経験をしてきたそうです。そして今春、7年ぶりにJBFAに復帰しました。

今回は、そんな内田さんにインタビュー!
「一般企業で働いてみて何を感じたか?」
「世界中を旅して何を学んだのか?」
「これからブラインドサッカー界でやりたいことは?」

視覚障がい当事者としての視点を持ちながら、自分がブラインドサッカーを通じて伝えられることに対して真剣に向き合ってきた内田さん。彼女の話には、混ざり合う社会を実現するためのヒントが隠されていました!

 

※内田さんの視覚について
メラニン色素合成の減少や欠損が原因の遺伝性疾患であるアルビニズムがある。
・視力:矯正不可で、両眼とも0.05
・視野:矯正不可で、両目とも約25度
・その他、眼振(自分で制御出来ない目の振動、でも見えているものは揺れていない)・羞明(しゅうめい、網膜に色がないから他の人よりも眩しく感じる)の症状もある。
また、日焼けをすると皮膚癌症状になる可能性がある。

 


ブラインドサッカーの外の世界を経験したことで、価値観が変わった

内田 佳 選手(弱視・ブラインドサッカー選手)

 

ーー2014年から約1年半のあいだ、JBFAで働いていた内田さん。7年ぶりのJBFA復帰となりますね。まずは、以前ブラインドサッカーに携わっていたときのことを教えてください。

ブラインドサッカー選手として、毎日のように学校や会社に出向き、ブラインドサッカーの体験会を実施する仕事を担当していました。大切にしていたのは、体験会を通じて「障がい者も工夫をすれば多くのことができるようになること」「違いに直面したとき、はじめは理解できなくてもいいから、まずは受け止めてみること」「常に寛容な気持ちで他人を受け入れること」という3つをきちんと伝えること。しかし、自分で話をしながら、どこか納得しきれていない部分があったんです。それまで盲学校という狭い世界で過ごしてきた自分には、社会経験が不足していたり、偏った視点でしか物事を捉えられていないのではないか・・・・・・? 自分で伝えようとしていることの本質を理解できていないような感覚です。このままじゃダメだと思い、JBFAをいったん離れ、外の世界を経験してみようと退職を決めました。

ーー2015年にJBFAを退職してから、2社の企業で働いていましたね。一般企業で働いてみていかがでしたか?

2015年から2017年は、一般企業で執行役員の秘書として働きました。周りからの理解がありましたし、私を障がい者としてでなく、ひとりの人間として受け入れてくれました。手伝いが必要なときは、嫌な顔をせず手伝ってくれる方が多かったですね。

驚いたことに、私が過去に講師として実施したブラサカ体験に参加したことがある社員の方が何名かいました(笑)

ーー企業では内田さんに対して、どんな配慮がありましたか?

うれしかった配慮は、ノートパソコンの他に、大きいモニターや音声ソフトを用意してくれたことです。また、私は眩しいのが苦手なので、窓から遠い席を用意してくれました。

一方で、ちょっと困惑してしまった配慮は、休憩が多かったこと=仕事が少なかったことですかね。その会社にとっては、私が初めての障がい者雇用で、入社前に「できること」「工夫すればできること」「難しいこと」のリストを提出していました。そのため、役員の方たちは私のできること・難しいことを理解してくれていましたが、現場ではそれらを理解してもらうのが簡単ではなく、必要以上の配慮による仕事の少なさに物足りなさを感じるようになっていきました。

ーーその後は、仕事を辞め、たったひとりで世界中を旅したと聞きましたが、いかがでしたか?

旅のあいだは、本当に多くの人と出会いました。当然ですが、良い人もいれば悪い人もいて。メキシコでは麻薬を押し売りされそうになったり、インドではカースト制度の現場を体験したりしました。現地では、出会った人の通訳をしたり、寝泊まりしたホテルで皿洗いして宿泊費や食費を免除してもらう生活で、苦労もありましたが楽しかったです。ときには、障がい者施設を訪問して一緒に生活することもありました。旅を通じて、世界には障がいの有無に関わらず必死に生きている人たちがたくさんいる、と改めて感じました。

ーー海外の障がい者施設での生活ではどんなことを感じましたか?

特に衝撃を受けたのは、インドにある、3歳から18歳までの障がい児が生活する全寮制の施設です。そこでは、視覚障がいのある小さい子どもが自分で手洗いで洗濯したり、白杖を持っていないのに街中を歩いたりしていました。日本ではありえない光景です。子どもに障がいがあれば、親は子につきっきりで何でもやってあげることが当たり前なのが日本です。どちらが正しいというわけではないかもしれませんが、早い段階から日常生活の自立を促すインドの施設の様子を見て、視覚障がい児への向き合い方についてもいろいろ考えました。

インドの視覚障がい児が、ブラインドサッカーやクリケットの練習をしているところも見ましたが、スポーツへの恐怖心もないようで、音への反応も速かったです。

ーーJBFAを離れていたあいだ、さまざまな経験をされたのですね。それらの経験を経て、内田さん自身、変化したところはありますか?

以前JBFAで働いていた頃は、自分と違う考えの人を否定することが多かったですし、自分と違う価値観からアドバイスをされた時には、「でも〜」と言って素直に受け入れられませんでした。

しかし、一般企業で働いたり、ひとり旅でさまざまな人の生い立ちや人生観を聞いたりするなかで、「世の中にはこういう人もいる」「こういう考えも良いな」「こういう経験をしているから、この考えに至ったのか」と感じることが増え、いろいろな考えを受け入れることができるようになりました。

 

視覚障がい者同士をつなげる”シナプス”になりたい

 

ーーアルビニズムで、先天性弱視の内田さん。ご自身の障がいに対してどのような価値観を持っていますか?

高校生の頃までは、自分に障がいがあることがとても嫌で、白い髪の毛も嫌いでした。「見た目が普通とは違う」と街中で言われることもあって、当時はすごく悲観的になっていました。

でも、ブラインドサッカーを知ってから、目が見えなくても堂々と生きている人や目が見えないことを誇りに思っている人と出会いました。その人たちと自分を照らし合わせて「自分も変わらないといけない」と思い、2014年にJBFAに入職しました。

それから仕事を通じて多くの人と関わったり、自分の特徴を生かしてブラインドサッカーの体験会を実施したりするなかで、少しずつですが「自分は自分で良い。内田佳に生まれてよかった」と思えるようになりました。

ーー視覚障がい者の視点から”働く”ことについてどのような考えをお持ちですか?

まずは、仕事を通して人間的に成長したいという思いがあります。具体的に伸ばしたい能力は、傾聴力とファシリテーション力です。ブラサカ体験会の講師をするうえでは、参加者の皆さんの反応を感じて、どういう進行や言葉がけをするかを考えることが重要です。しかし、私は目が見えにくいので、当然ながら参加者の表情や仕草が見えにくい。視覚情報に頼らず、その場の雰囲気を感じて上手く体験会を進行できるようになりたいです。

また、自分の仕事を通じて「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会」を実現したいと思っています。ブラインドサッカーの体験会を実施すると、開始前と終了後では参加者の反応が変わります。障がい者に対する考えが変わってくれると実感します。以前、体験会後に子どもたちから「どうして肌や髪の毛が白いの?」と質問されて、私が理由を答えると、「うさぎと同じだね」って言ってくれた子がいました。自分を特別な存在ではなく、”内田佳”として見てくれたと感じて、とてもうれしかったです。

そんなふうに自分の仕事を通じて、障がいに対してフラットな目線を持つ人を増やしたいと思っています。

ーー内田さんがこれからチャレンジしたいことを教えてください。

今チャレンジしたいと思っていることは「視覚障がい者同士をつなげるシナプスになること」と「女子中心チームの設立」です。

ーー「視覚障がい者同士をつなげるシナプスになる」とはどういうことですか?

視覚障がい者がほしい情報を集約して、それを必要としている視覚障がい者に拡散してつながりを作ることです。視覚障がいは”情報障がい”とも言われており、情報収集が困難で、やりたいことがあるにも関わらず情報不足でできないことが多くあります。若い時から視覚に障がいがあって、盲学校に通っていたりすれば、知り合いに視覚障がい者は多くなります。しかし、中途で視覚障がいを患うと、視覚障がい者に必要な情報が得られず、日常生活・仕事・余暇を楽しめない人が多いのが現状です。眼科に通院していても、眼科医はそういった情報はあまり持っていないので、情報不足で不安になってしまいます。

また、情報不足は障がいのある学生の就職先や職種を狭めてしまいます。最近は、全盲・弱視に関わらず一般学校に通っている学生が増えており、学習への配慮も充実してきているため、授業にはそれほど困らないようです。一方で、就職に関する情報は依然として不足しているため、やはり就職口が狭まってしまいます。

そうした状況を変えていくためにも、私が”視覚障がい者同士をつなげるシナプス”になりたいと思っています。JBFAには「おたすけ電話相談窓口」もありますし、SNSのフォロワーにも視覚障がい当事者が少なくありません。視覚障がい者の困っていることや知りたい情報を調査して、当事者が集まるところで情報を発信する。その中で視覚障がい者同士がつながる仕組みも作っていきたいです。

ーーもう一つの目標である、女子中心チームの設立をしたい理由を教えてください。

女子中心と言っていますが、女性だけでなく、男性やLGBTの方も大歓迎です! 現在ブラインドサッカーでは、男性中心のチームの中に女性”も”いるというところが多いです。

私の周りでは、「あまりガツガツプレーをしたいわけではないけれど、ブラサカを通じて運動習慣をつけたい」「障がいが関係のない憩いの場がほしい」という声をよく耳にします。そのため、私が設立を目指す女子中心チームでは、本格的な競技志向でなく、視覚障がい者も健常者も一緒にできるブラインドスポーツを楽しむためにみんなが集まりたいと思う場=チームにしたいと考えています。

ーー最後に読者の皆さまに伝えたいことはありますか?

4月からJBFAで事業推進部に所属となっています。スポ育やOFF T!ME・体験イベントなどで、皆さんにもお会いすることがあるかもしれません。2014年から2015年のあいだにJBFAで働いていたときにも伝えたかった、「障がい者も工夫をすれば多くのことができるようになること」「違いに直面したとき、はじめは理解できなくてもいいから、まずは受け止めてみること」「常に寛容な気持ちで他人を受け入れること」という3つのことの大切さ。これらについて、数年間ブラサカから離れた世界を経験したことで、自分の中でちゃんと納得できました。今ならその大切さを自分の言葉で伝えられると思っています。

体験会を存分に楽しんでいただけるように準備をしながら、読者の皆さまにお会いできる日を心待ちにしています。

 


※内田 佳さんの生い立ち
●保育園時代:読書が好きだった。よく辞書も読んでいた。小学校に入るまでは、自分が目が見えにくいと気がつかなかった。
●小学校(一般校):教科書の文字は見えたけれど、黒板の文字は見えなかったため、先生に読んでもらってノートを取っていた。体育にも参加していたけれど、球技は難しかった。
●中学校(盲学校):教科書とノート、配布されたプリントの3つを交互に見るのが大変だったので、ノートは取らずに、板書やメモは教科書に書き込んでいた。ちゃんとノート取らなかったため先生に怒られたが、テストで良い点を取ったら納得してくれた。3つのものを交互に見るのは苦手です。
●高校(盲学校):漢字が複雑になり、画数が増えると拡大しても見えないため、先生にゆっくり手書きして教えてもらっていた。漢字を説明するのは得意になった。
●大学(鍼灸科):医療用語は漢字の画数が多いため、メモのために英語の略語を使用していた。それが、海外に行った時に役立った。


編集後記

最後までお読みいただき、ありがとうございます。ブラサカマガジン担当の貴戸です。私は普段、このメルマガやSNSを通じてブラインドサッカーの魅力や、JBFAの活動を発信する仕事をしています。しかし、視覚障がいの当事者でないと気づけないこと・当事者でないと感じられないこと・当事者でないと伝えられないことは、必ずあると感じています。

内田さんは、視覚障がい当事者の視点を持ちながら、自分の考えに向き合って行動を起こすことができる人です。そして、持ち前の明るさで周りを笑顔にする人です。視覚障がい者同士をつなぎ、さらに視覚障がい者と健常者同士もつなぐ。そんな仕事を期待しています!

皆さんにお会いした時にも、きっと楽しませてくれることでしょう。OFF T!MEなどにご参加いただければ、内田さんから直接ブラサカのポイントを聞くことができます。よろしければぜひお申込みください!

 


 

 

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